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先日、自宅近くで赤とんぼを見かけました。
赤とんぼと呼ばれる仲間にもいくつか種類があります。
夏の間、高原にいて秋に平地へ戻ってくるアキアカネや、比較的身近な場所でみられるナツアカネなどです。
最近では生息数の減少も話題になることがあり、以前より見かける機会が少なったと感じる方もいるかもしれません。

トンボは4枚の羽をもっています。
羽ばたきの回数は1秒あたり約20〜40回と、ハチ類に比べると決して多くはありません。
それでも優れた飛行能力を発揮できるのは、4枚の羽を独立して動かせるためです。
前の羽と後の羽を少しずらしながら羽ばたくことで、空中で停止するホバリングや急旋回を行うことができます。
昆虫の中でも飛行性能は非常に高く、獲物を追いかけながら方向転換し、障害物を避けて飛び続けます。
トンボを模倣した飛行ロボットの研究が行われているのも、そのためです。

トンボの顔を見ると、まず目の大きさに驚かされます。
その複眼は1万〜3万個もの個眼と呼ばれる小さな目の集合体で構成されています。
昆虫の複眼としても非常に発達した部類に入ります。
さらに興味深いのは、色を感じる仕組みです。
人間の目には赤・緑・青の光に反応する3種類のオプシン(光センサーとして働くたんぱく質)*1があります。
一方でトンボは種類によって15〜33種類ものオプシンを持つことが知られており、人間には見えない紫外線の領域も認識できるそうです。
私たちに見えない世界まで感じとれると考えると、トンボがどのような鮮やかな景色を見ているのか興味が湧いています。
青空の中で仲間を見つけたり、水辺で産卵場所を探したり、獲物を捕らえたりする能力は、この独特な色覚によって支えられているのでしょう。
トンボの複眼は、単にたくさんの個眼が集まっているだけではありません。
研究によると、複眼の上部(背側)と下部(腹側)で役割を分担していることが分かっています。
背側には、青空や太陽の位置を捉えるための個眼が集中しています。
一方で腹側には、地表や餌、繁殖相手などを認識するための個眼が配置されています。
つまりトンボは、一つの視覚器官の中で監視対象を分担していることになります。
この小さな昆虫は、空を見張る目と地上を見張る目を使い分けながら飛行しているのです。
これほど多くの視覚情報を飛びながらリアルタイムで処理していると考えると驚かされます。
獲物や障害物を見つけ、進路を修正し、行動へ結びつける仕組みは、現代の画像認識システムにもどこか通じるものがあるように思えます。
トンボの複眼は、多数の個眼から得た情報を統合しながら周囲の状況を判断しています。
一方、現代の画像認識AIも複数の画像情報を解析し、人間では気づきにくい変化や異常を検出しています。
ここで関連するブログ記事をご紹介します。
■今回のピックアップ・ブログ
本記事では、画像による対象物の認識技術について紹介されています。
また、当社は先日開催されたHitachi Social Innovation Forum 2026 JAPAN(2026年9月3日(木)〜9月4日(金)・東京国際フォーラム開催)において、360度カメラとAIを組み合わせた安全監視システムを模したデモ展示を行いました。
複数方向の映像を解析し、現場の状況把握を支援する取り組みです。
空を飛ぶ小さな昆虫と、産業分野のAI技術。
一見すると無関係のようですが、「多くの視覚情報を集めて判断する」という点では共通する部分があります。
自然界の生きものたちは、私たちが思っている以上に優れたセンサーを備えています。
トンボの複眼もまた、これからの画像認識技術やフィジカルAIを考える上で、多くのヒントを与えてくれる存在なのかもしれません。
2026年9月
株式会社 日立情報通信エンジニアリング
経営戦略本部 ブランド・コミュニケーション部
阿部 哲也
※編集・執筆当時の記事のため、現在の情報と異なる場合があります。編集・執筆の時期については、記事末尾をご覧ください。